2021/05/18
次世代シーケンサーとバイオインフォマティクスデータ分析で出来ること
分野
iPS細胞 次世代シーケンサー バイオインフォマティクス
内容
2021年4月27日(月)の当社主催オンラインセミナーでは、奈良県立医科大学 発生・再生医学講座の池田 宏樹先生をお招きし、『ライフサイエンス研究開発における次世代シーケンサーとバイオインフォマティクスデータ分析の活用』をテーマに、次世代シーケンサー(以下、NGS)の活用事例とバイオインフォマティクスデータ分析でどのようなことが分かるのかについて解説いただきました。
NGSの活用事例のトピックとして、まずCOVID-19の変異解析をご紹介頂きました。COVID-19の患者に感染したウイルスの全ゲノム情報をNGSで分析することによって、ウイルスの変異箇所を効率よく特定することが出来ます。更にウイルス変異の系統樹を作製し、変異が検出された時間軸を併せて分析することにより、ウイルス変異株の変遷の全体像を可視化することが可能となりました。また、ウイルスが検出された地域・場所の情報も加えて解析することにより、変異株の発生源やその後の伝播経路も可視化できます。NGSによって、英国型、ブラジル型、南アフリカ型、最近ではインド型などウイルスの変異型の特定が容易となっています。
再生医療領域においては、iPS細胞由来の網膜色素細胞の品質検査としてNGSを用いた例をご紹介いただきました。分化誘導して作製された網膜色素細胞の全遺伝子の発現レベルをRNA-seqで網羅的に解析し、その発現パターンがヒトの網膜色素細胞と近いか、別の組織細胞や腫瘍細胞とは異なるかを確かめることで、作製した細胞シートが移植可能か判断する方法の一つとして活用されました。
前回の最新技術情報でも取り上げましたが、iPS細胞からの胚盤胞様構造( blastoid )の作製に関してもNGSが活用されています。Blastoid構成細胞のシングルセル解析によって、人工着床前胚の細胞が通常の着床前胚に含まれる細胞を有していることが確かめられました。
現在、NGSを用いることで細胞集団や個別細胞のゲノム配列や遺伝子発現パターンを捉えることが出来るようになっていますが、それらの細胞が組織のどこに分布しているのかは不明でした。空間的トランスクリプトーム解析(組織サンプルにおける遺伝子発現を位置情報と合わせて解析すること)が注目されていますが、池田先生が所属する研究室でも、組織切片像にリンクした単一細胞RNA-seq手法の構築を進めておられます。
iPSポータルでは、創薬研究や培養デバイス等の開発での「バイオインフォマティクスデータ分析」の受託を行っております。
関連HP https://ipsportal.com/service/technology/data.html
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オンラインセミナー発表資料より(奈良県立医科大学 池田 宏樹)
参考資料
Genomic epidemiology of novel coronavirus – Global subsampling
https://nextstrain.org/ncov/global
参考文献
Autologous Induced Stem-Cell–Derived Retinal Cells for Macular Degeneration
Mandai, A. Watanabe, Y. Kurimoto, et al.
March 16, 2017 N Engl J Med 2017; 376:1038-1046
https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1608368?listPDF=true
Modelling human blastocysts by reprogramming fibroblasts into iBlastoids.
Liu, X., Tan, J.P., Schröder, J. et al.
Nature volume 591, pages627–632(2021).
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03372-y